はじめに
「親が高齢者向け住宅に入居することになったけれど、実家をどうすればいいのかわからない」
「親の兄弟で不動産を共有しているけれど、意見をまとめていくのがなかなかしんどい」
このようなご相談を、当事務所では数多くお受けしています。
今回は、親御さんの施設入居に伴い、親の兄弟で共有していた実家の売却(換価分割)を実現した事例をご紹介します。50代以上の方で、親の介護や実家の処分にお悩みの方に、ぜひ参考にしていただければと思います。

ご相談の背景
ご相談者は50代後半の長男の方でした。
状況:
- 80代の母親が、食事・各種レクリエーション施設付きのサービス付き高齢者向け住宅への入居を希望
- 実家は母親名義の持分2分の1と母の兄弟の叔父が2分の1を保有していた記憶がある
- 実家を売却して、入居費用に充てたいが不動産共有持分のために悩んでいる
- 母方の叔父とは数年間ほとんど連絡を取っておらず、母も叔父とは連絡を取っていない
「母の入居費用のために少しでもお金を準備したいので、実家を売りたいが、母方の叔父と連絡が取れず、どう進めればいいかわからない」というご相談でした。
実家じまいと不動産共有、なぜ難しいのか?
1. 経済的な負担が重なる
- 施設入居費用: サービス付き高齢者向け住宅の入居費用は千差万別だがそれなりにまとまったお金が必要
- 実家の維持費用: 空き家になった後も保有の持分に応じて固定資産税、光熱費、管理費がかかる
- 二重の負担: 入居費用を払いながら、実家も維持する経済的余裕がない
2. 共有不動産特有の問題
不動産が共有状態の場合、以下の課題があります。
- 全員の同意が必要: 売却には共有者全員の合意が不可欠
- 意見の対立: 「売りたい」「残したい」「時期を待ちたい」など意見が分かれる
- 連絡が取れない: 疎遠な兄弟姉妹がいると、話し合いすらできない
3. 精神的な負担
- 思い出の詰まった実家: 手放すことへの抵抗感
- 兄弟間の気まずさ: 長年疎遠だった相手に連絡する心理的ハードル
- 近隣への配慮: 空き家になることで近所に迷惑をかける不安
調整で実現した解決
疎遠な兄弟との接触(約2ヶ月)
まず、叔父の連絡手段を確保することから始めました。
- 連絡手段は母が控えていたのでスムーズに確認できた。
- 手紙による状況説明と連絡のお願い(複数回)
約3ヶ月をかけて粘り強くアプローチした結果、叔父様と叔父様家族とお会いすることができました。
母親の状況と全員の意向確認
母親の状況:
接触後、以下の点を丁寧に説明・確認しました。
- サービス付き高齢者向け住宅入居の必要性
- 入居金捻出及び月額施設利用料のために実家売却が必要
- 一人暮らしの限界と施設での安心した生活
叔父様の意向:
- 本当はこちらが共有持分を買いとりたいが、買い取る資金もないため全員で売却することになりました
合意形成と不動産売却に向けての調整(約1ヶ月)と売却(約3ヶ月)
- 代理売却の準備: 母親から長男への売却代理権限の付与
- 不動産業者の選定: 地元に強い業者を選定
- 売却活動: 約3ヶ月で買主が決定
- 決済と分配: 売却代金から入居金を支払い、残りは母親が管理
トータルで約6ヶ月を要しましたが、無事に実家の売却と母親の入居が実現しました。
この事例から学べること
1. 「トラブル未満」なら調整できる
今回のケースでは、叔父様との間に「対立」まではありませんでした。
単に「疎遠」で「連絡が取れない」状態だったのです。このようなトラブル未満の段階であれば、行政書士が間に入って調整することが可能です。
2. 時間をかけた丁寧な説明が鍵
疎遠だった兄弟を説得するには、一方的な要求ではなく、
- 母親の状況を丁寧に説明する
- 相手の気持ちに寄り添う
- 経済的な現実を冷静に示す
- 公平な分配を約束する
といった姿勢が重要です。
3. 専門家のサポートで感情的対立を回避
身内同士だと、どうしても感情的になりがちです。第三者である専門家が間に入ることで、
- 客観的な説明ができる
- 法的に正確な情報を提供できる
- 手続きの見通しを示せる
- 感情的な対立を避けられる
というメリットがあります。
実家じまいを進める上でのポイント
1. 早めに家族・親族で話し合う
- 誰が中心となって進めるか: 窓口を一本化することで混乱を避ける
- 各自の希望の確認: 「残したい」「早く売りたい」など率直に共有
2. 現実的な負担を共有する
- 維持費用の試算: 固定資産税、火災保険、管理費を年間でいくらか計算
- 入居費用の確認: 施設の入居金、月額費用を明確化
- 空き家リスク: 放置による劣化、火災、空き家の税金の問題
3. 手続きの準備
- 権限の整理: 誰が売却の窓口になるか(代理権の設定)
- 必要書類の準備: 登記簿、固定資産税評価証明書など
- 不動産業者の選定: 地元に強く、信頼できる業者を選ぶ
実家じまいは新しいスタート
実家じまいは、単に家を手放すだけではありません。
- 親御さんの新しい生活: 安全で快適な環境での新生活
- 経済的な安心: 維持費の負担から解放され、親の介護資金を確保
実家じまいは、過去との決別ではなく、未来への希望を繋ぐ大切な機会です。
こんな方はご相談ください
- 親の施設入居を検討しているが、実家の処分に悩んでいる
- 兄弟姉妹と疎遠で、話し合いができない
- 不動産が共有状態で、どう進めればいいかわからない
- 他の共有者に相続が発生していた。
- 相続前に整理しておきたい
おわりに
施設入居と実家じまいは、人生における大きな転換期です。特に兄弟姉妹との関係が疎遠だったり、不動産が共有状態だったりすると、手続きはさらに複雑になります。
しかし、「トラブル未満」の段階であれば、調整の余地は十分にあります。
当事務所では、府中市とその周辺地域で20年以上、相続・不動産・実家じまいのサポートをしてまいりました。お客様一人ひとりの状況に寄り添い、粘り強く、円満な解決を目指します。
石川慶行政書士事務所
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