
はじめに
「一人暮らしで年金だけでは生活が苦しい」
「持ち家はあるけれど、老後資金が不安」
「引っ越したいけれど、高齢者は賃貸を断られると聞いて諦めている」
このようなお悩みを抱えた、おひとりさまの方からのご相談が増えています。
今回は、70代のおひとりさまの方が、ご自宅を売却して都営住宅に住み替え、老後資金を確保した事例をご紹介します。
ご相談の背景
ご相談者は70代前半の女性でした。
状況:
- 夫と死別後、一人暮らし
- 子どもはおらず、親族とも疎遠
- 府中市内の一戸建て(築40年)に一人で居住
- 収入は年金のみ(月額約12万円)
- 貯金は300万円程度で、将来が不安
- 自宅の維持費(固定資産税、修繕費)が重い負担に
「このまま一人で家を維持していけるか不安。でも高齢者が引っ越すのは難しいと聞いて、どうすればいいかわからない」というご相談でした。
おひとりさまが直面する「住まい」の問題
1. 経済的な負担
国立社会保障・人口問題研究所が2024年4月に公表した世帯数の将来推計によれば、2020年時点で単独世帯は2115万世帯、世帯総数の38%を占めています。
おひとりさまの多くが抱える問題:
- 年金だけでは生活が苦しい: 月10〜15万円の年金収入
- 持ち家の維持費が重い: 固定資産税、修繕費、光熱費
- 老後資金の不安: 医療費や介護費用の備えが不足
2. 物理的な負担
- 広すぎる家: 一人には管理が大変
- 階段や段差: 加齢とともに危険に
- 庭や外回りの手入れ: 体力的に困難
- 修繕の必要性: 築年数が経つほど増える出費
3. 賃貸への壁
「高齢者は賃貸を断られる」という思い込みで、引っ越しを諦めている方が多くいらっしゃいます。
提案した解決策:自宅売却+公営住宅への住み替え
ステップ1: 不動産価格の査定
まず、ご自宅の売却価格を複数の不動産業者に査定依頼しました。
- 築40年の一戸建て
- 土地60坪、建物30坪
- 査定額: 約2200万円(土地の価値が中心)
ステップ2: 引っ越し先の検討
次に、引っ越し先を一緒に検討しました。
民間賃貸の課題:
- 高齢者という理由で断られるケースが多い
- 保証人が必要(親族が遠方・疎遠だと困難)
- 家賃が高い(月8〜10万円)
公営住宅という選択肢:
私からご提案したのが、UR住宅や都営住宅への入居でした。
UR住宅(都市再生機構)の特徴:
- 保証人不要
- 礼金・仲介手数料不要
- 高齢者という理由で断られない
- 一定の収入があれば入居可能
- 家賃: 月5〜7万円程度(地域・間取りによる)
都営住宅・市営住宅の特徴:
- 所得制限あり(年金収入のみなら該当しやすい)
- 抽選制だが、高齢者・単身者向け枠がある
- 家賃: 月2〜4万円程度(所得に応じて決定)
- 保証人不要(自治体による)
ステップ3: 都営住宅への申し込み(約4ヶ月)
ご相談者の収入状況から、都営住宅が最適と判断しました。
- 募集時期の確認: 年4回(2月、5月、8月、11月)の定期募集
- 申込書類の準備: 収入証明、住民票などをサポート
- 抽選結果: 高齢者単身枠で当選
- 入居審査: 無事通過
約4ヶ月で、府中市内の都営住宅(1DK)への入居が決定しました。
家賃: 月額2.8万円(所得に応じた減額措置適用)
ステップ4: 自宅の売却(約3ヶ月)
都営住宅への入居が決まったため、並行して自宅の売却を進めました。
- 不動産業者と媒介契約
- 売却活動: 約2ヶ月
- 売買契約・決済: 約1ヶ月
- 売却価格: 2150万円
ステップ5: 引っ越しと新生活
- 引っ越し費用: 約15万円(不用品処分含む)
- 新居の初期費用: 約10万円(敷金のみ)
- 手元に残った資金: 約1800万円
従来の生活費:
- 年金: 月12万円
- 固定資産税: 年12万円(月1万円)
- 光熱費(戸建て): 月2万円
- 修繕積立: 月1万円
- 実質的な生活費: 月8万円
新しい生活費:
- 年金: 月12万円
- 家賃: 月2.8万円
- 光熱費(1DK): 月1万円
- 実質的な生活費: 月8.2万円
家賃が発生しても、固定資産税や修繕費がなくなったため、月々の負担はほぼ変わらず、かつ1800万円の老後資金を確保できました。
老後資金1800万円の意味
売却で得た資金を、以下のように活用できます。
パターン1: 毎月の生活費を補填
- 月10万円ずつ使う → 15年間で1800万円
- 年金12万円+貯金10万円 = 月22万円の生活が可能
パターン2: 緊急時の備え
- 医療費、介護費用、葬儀費用などの備え
- 月5万円ずつ使う → 30年間で1800万円
- 90代後半まで安心
パターン3: 人生を楽しむ
- 旅行、趣味、孫へのプレゼントなど
- 「財産を0円にして死にたい」という考え方も
- 今を楽しみながら、計画的に使い切る
この事例から学べること
1. 「高齢者は賃貸を断られる」は半分正解、半分誤解
民間賃貸: 確かに断られるケースが多い
公営住宅(UR・都営・市営):
- 高齢者という理由で断られることはない
- むしろ高齢者・単身者向けの優遇枠がある
- 保証人不要の物件が多い
2. 持ち家を「資産」として活用する
- 住み続けることだけが選択肢ではない
- 売却して現金化することで、生活の選択肢が広がる
- 健康寿命のうちに住み替えることで、新生活にも適応しやすい
3. 「住み慣れた家を離れる」不安への向き合い方
今回のご相談者も、当初は「この家を離れたくない」とおっしゃっていました。
しかし、以下の点を一緒に考えた結果、決断されました。
- 経済的な安心: 老後資金の確保
- 物理的な安心: バリアフリーの公営住宅、エレベーター付き
- 精神的な安心: 万が一のときの備えができた
- 新しい環境: 同じような境遇の方との新しいコミュニティ
「思い出は心の中に残る。新しい場所で新しい思い出を作ればいい」
そうおっしゃって、前向きに引っ越しされました。
おひとりさまの自宅じまいを進める上でのポイント
1. まずは不動産の価値を知る
- 複数の業者に査定を依頼(無料)
- 「いくらで売れるか」を知ることが第一歩
- 売却するかは後で決めればいい
2. 引っ越し先の選択肢を広げる
UR住宅:
- 保証人不要、礼金不要
- 全国に約71万戸
- 比較的入居しやすい
都営・市営住宅:
- 家賃が安い(所得に応じて決定)
- 抽選制だが、高齢者枠がある
- 年4回の募集チャンスがある
サービス付き高齢者向け住宅:
- 見守りサービス付き
- 初期費用は高いが、安心感がある
3. 専門家に相談する
- 不動産売却、引っ越し先探し、各種手続きをトータルサポート
- おひとりさまでも安心して進められる
- 客観的なアドバイスで冷静な判断ができる
こんな方はご相談ください
- おひとりさまで、老後資金に不安がある
- 持ち家はあるが、年金だけでは生活が苦しい
- 自宅の維持費(固定資産税、修繕費)が負担
- 高齢者だから引っ越しは無理だと諦めている
- 自宅を売却して、身軽になりたい
- UR住宅や公営住宅への住み替えを検討したい
おわりに
おひとりさまの自宅じまいは、単に家を手放すだけではありません。
- 経済的な安心: 老後資金の確保
- 物理的な安心: 管理しやすい住まいへ
- 精神的な安心: 万が一への備え
- 新しい人生: 身軽になって、今を楽しむ
「財産を限りなく0円にして死にたい」
私も個人的にそう考えています。最低限のお金は保持しながら、生きている今を楽しむ。そのために、持ち家という資産を活用する選択肢を、ぜひ検討してみてください。
当事務所では、不動産のおよその価格査定のご紹介から、引っ越し先のご相談、各種手続きのサポートまで、トータルでお手伝いいたします。
石川慶行政書士事務所
京王線府中駅北口 徒歩2分
対応エリア:
府中市、国分寺市、稲城市、小金井市、国立市、調布市、多摩市
ご相談内容:
- おひとりさまの自宅売却サポート
- UR住宅、都営・市営住宅への住み替え相談
- 不動産業者、引っ越し業者のご紹介
- 生前整理、遺品整理のサポート
- 任意後見、遺言書作成